トリプル・ブッキングのどれも仕事ではないのだけれど

次回のライブに向けてのミーティング兼クジラのコロと牛スジをおでんで食す会の為に、ベーシストであり我がグループNo.1の調理の腕前を持ち、今回もわざわざ仕込みの段階から他のメンバーよりも早くやって来る予定時刻が昼間の2時頃。
それまで寝ていようと、朝方に布団に潜った自分の携帯電話が正午前に鳴るので、いくらなんでも早過ぎじゃボケッ!と自分勝手な言葉を喉元で堪えた理由は、電話の相手がFくんではなく、つのだ☆ひろ氏の奥方からだったわけで。

「おはよう。とりあえず2時までに家に来てねー。」「へ?」この時点でまだ寝惚けている自分。「へ?じゃなくて。今日、前から言ってたボクシングの世界タイトルマッチ。」「あ、あ、あああああああーっ!!」奥方からの電話を切りすぐさまFくんに連絡を入れ、事情を話し、仕込み開始時間を3時間遅らせてもらい、大急ぎでシャワーを浴び身支度を整えた後、季節外れの生暖かい外気に寝不足の体がややもすると地面に崩れ落ちそうになるのを膝で懸命に踏ん張りながら、☆ひろ氏宅へ向かったのだよ。

そこから車で本日の"WBC世界バンタム級タイトルマッチ 山中慎介VSアルベルト・ゲバラ戦"が行われる両国国技館まで行き、☆ひろ氏と二人で車を降りる。「え?オイラとひろさんだけ?」「そうよ、私、仕事あるもん。終わったら連絡ちょーだい、迎えに来るから。この人電話持ってないんで宜しくねー。」ブーン、あっ行っちゃった。
本来はここから付き人という役目に徹しなければならないわけだけれど、☆ひろ氏はボクが付き人としてまったく役に立たないのを今までの付き合いで知っているし、逆にミュージシャンの大先輩である彼の方から「ツカサー、あれ飲みたくね? あれ買ってみねぇ?」と、こちら気を使って下さるので、こっちも恐縮しっぱなし。「ひろさん、オレ買って来ますよ。」と言っても、あの笑顔を頬に「いいよ、自分で行くよ。それにオマエに頼んだらまたどこかフラーッと行っちゃいそうだしさ(笑)。」と、ボクに"風来坊"と名付けた名付け親の彼独特の言い回しで気を使ってくれる。ま、早い話、彼と親子のような関係の直弟子・武田光太郎の方が遙かに信頼はされている。『信用』されているかどうかは別にしても。けれどボクの方も、光太郎さんが親父と仰ぐ☆ひろさんはボクにとっては兄弟分の親父、所謂、叔父貴なので、その二人の関係を彼らの少しだけ外側で見守り、時に全力で協力する立場は昔も今も変わらず、☆ひろ氏もそこをきちんとご理解して下さっているのが、ボクには有り難かったりするわけなのだよ。

さて、話を戻して、会場のリングに限りなく近い『関係者席』と呼ばれるその席で、右隣に御大つのだ☆ひろ氏、左隣にくりーむしちゅー上田氏、すぐ前に六角精児氏と、こんな有名人たちのトライアングルの中心に据え置かれたのに加え、ボクらから少し離れた席に居並ぶ日本人元・現世界チャンプたちの姿に心はときめくも、寝不足の体は正直者で、試合観戦中もパンチを受けたボクサーのように時折意識が遠くのを柄の悪いサングラスで隠しながらも、メインイベントのタイトルマッチを含めた数試合のどれもが素晴らしい試合で、結局最後の最後まで興奮しっぱなしだったのだよ。
タイトルマッチ終了後、お迎え要請の電話を奥方に入れ、ほどなくしてやって来た車に乗り込み、ひとまず☆ひろ氏のスタジオまで戻り、そこから帰宅の途に。さぁ次はミーティング兼くじらのコロと牛スジメインのおでん会だ。
まだ眠るわけにはいかぬ。

自宅に戻ると、ベーシストのFくんはせっせと調理をし、彼の妻でありパーカッションのHちゃんは咥えタバコでコタツに潜り、ボクはボクで、あぁ今日は本当に悪かったね、ところでおでんはまだか? 眠いんじゃ眠いんじゃとわがまま言いたい放題で、そそくさとやっぱりコタツに肩まで潜る。
彼自慢のおでんを皆で食べた後、さっそく次回のライブの自分の頭に思い描く進行や演出を彼らに説明しながら、それでもいつものワンマンライブほどの時間は取れないので、ならば何処を削ろうかと試行錯誤をして、とりあえずのプログラムが出来上がったのが午前0時前。
FくんとHちゃんが帰宅準備をしている最中に携帯電話が鳴る。
「はいもしもし。」「ツカサさん、○○です。お疲れさまー。伊平屋島からよ、フットサルチームが全国大会に出て来ててさ、覚えてるよね? 今日、全国6位になってさ、今東京で飲んでるわけよ。」「おぅ。で、東京の何処で飲んでるの?」「俺は今回伊平屋に居残りだったからさ、東京の何処かわからないわけよ。で、今からツカサさん、出てこられるかってこっちに聞いてきてるわけよ。」「アホ。伊平屋の前泊から島尻に行くのとワケが違うぞ。東京の何処か、それ次第では今からの時間では不可能じゃ。」「じゃあツカサさんの電話番号をアイツらに教えておくから、歌舞伎町に着いたら電話させるし。」

そんな電話から早3時間が経ち只今午前2時50分。未だに伊平屋のフットサルメンバーからの連絡無し。そしてボクはすごーーーーーく眠い! そりゃあ今日という日を忘れていた自分がそもそも悪いのだけれども、もーね、今年も歌舞伎町でボッたくられてしまえ______。

日記