その狡賢さ、この日本人には通じませんよ

ボクが手伝っているボート屋で働くスタッフでもあり、古くからの友人であるジェイボンを、公衆の面前で日本語で怒鳴りつけたというか、怒鳴り散らしたのがかれこれ3日前の事で、日本からの土産で彼にあげた古いデジタルカメラとウォータープルーフも強引に返してもらった。

ここまでするのにはそれなりの理由があり、彼は常日頃から怠け者で極度の女好きで友達に対しても平気で嘘をつき、全て自分自身のために動くという、謂わば典型的なクズである。ただ、周りの者よりも多少コミュニケーション能力に長け、この島に訪れる人の割合が多い欧州をはじめとする各国の言葉を、片言ずつではあるけれど喋れたりするため、欧米人客からの、特に女性からの受けは良いので、それを鼻にかけて、客は引くけれどそれ以降の業務を怠る。
例えば、ある客を引き、ボートでシュノーケリングポイントまで運ぶところまではいいが、迎えに行かなかったり、約束した客が待っているのに家で寝ていたりする。その尻拭いをボート屋主人や他のスタッフたちがせねばならず、それに対してのお礼の言葉も謝る言葉も今まで一切彼の口から聞いた事が無い。
そしてその全てに女性が絡んでいて、数年前には仲良くなった客のドイツ人女性を無理矢理酔わせ、彼女のシャレーに忍び込み…。翌日彼は準強姦罪で捕まり、数ヶ月間は本土の警察に拘留されていたのだけれど、こちらでの裁判は原告本人が出廷しなければ成立しないらしく、数ヶ月後には家族に保釈金を払ってもらい娑婆に出てきた。しばらくは島にも帰れず身内の保護観察下で働いてはいたのだけれど、それも長くは続かず、島に戻って来て再びボート屋で働き始め現在に至る。そして現在も詐欺まがいの手口で客ばかりか周りにまで迷惑をかける。

時間の経過の効力は時に良い方にも働けば悪い方にも働き、今の彼から、彼自身が何かを省みたか全く感じられず、ただでさえいい加減なマレー人という事を差し引いても目に余る言動や行動が多く、周りの人間もほとほと困っていたのだけれど、争いを好まないマレー人気質からか、誰も彼を諌める者もおらず、昨夜ボクとの約束を破った事もあり、丁度良い機会が巡ってきた。

日本語で怒鳴り散らしたので彼にはその意味すら解らなかったはずだけれど、ボクが真剣に怒っているのは周りの観光客のビビり様からも、彼にはしっかり伝わったようでその証拠に、反省するどころか、この数日間彼は開き直ったかのようにボクを無視し続けている。
ただ、彼は精神的に弱い人間なので、周りの仲間たちにも協力してもらい彼のための逃げ道は作ってはいる。あとは彼自身がその入り口を見つけられるかどうかの話だけれど、今日はボート屋主人の奥さんに金の無心をした後、島を出たらしく、30歳にも成って精神は中学生のこの男との付き合いをどーするべきか模索中な月曜日____。