無理せずのんびり取り戻す

月曜日に本土の病院を退院したは良いものの、日本に帰国する迄の間、術後の傷口を覆う包帯を絶対濡らしてはダメな事と、これまた日本に帰国する迄の毎日、島の病院(公立病院Rm150・クリニックRm40)での消毒と同時に、必ず看護師の手で抗生物質や皮下組織を盛り上げる薬を塗布した後、本土の病院から支給されたなんらかの薬剤を染み込ませたガーゼと包帯の交換を義務付けられる。ま、それだけ術後のケアが重要なくらいの傷みようだったのだろうけれど、宿のあるビーチからフェリーターミナルにほど近い病院まで、毎日片道約8kmもの峠道をバイクで行ったり来たりせにゃならんのは煩わしい。ボート屋主人の家にはほぼ毎晩行っているくせに。

シャワーの時は脚の包帯部分をビニール袋で覆い、その脚を近くの便座の上に乗せ、身体を流れる水が一滴たりともそちらの方向に流れぬように、それはそれは大げさに胸を張る、まるで狩の獲物の頭に片足を乗せたまま御用絵師に肖像画を書かせる王族貴族のような偉ぶり様でシャワーを浴びるも、所詮は丸裸という滑稽さはそのまま「裸の王様」を連想させる。

脚を濡らす可能性の高い釣りなんぞ以ての外で、パンコール島に戻って来て2日は惚けた老人の如く小さく波打つ海を眺めていたのだけれど、その視線の先ではポンポンとイカを釣りあげる仲間たちのボートが何艘も青と緑のグラデーションの上で揺れていて、傷口の疼きより胸の疼きが抑えきれなくなった一昨日火曜日、包帯で固められた脚に黒いゴミ袋を巻いた格好で、誘う仲間のボートに乗り込み海へ。良型のイカ三杯を始め、たったの2時間で2kg以上を釣り上げた事もさる事ながら、やっぱり海の上に出られた喜びはひとしおなのだよ。

昨日と今日は、脚の防水プロテクターをゴミ袋から幾重にも巻いたサランラップに強化し、傷口を濡らさぬようにと、船外機付きでただでさえ重いボートを浜辺から、ボートを押せぬボクが乗った状態のまま、砕ける波の向こう側へと押し出してくれる仲間たちの優しさを背に、沖に向かう。
手術で大きくえぐり取られた傷口の痛みよりワクワクの方が遥かに強い。


残り1ヶ月を切ったパンコール島ライフ。
反対側の足に出ていた約1ヶ月以上にわたる長き痛風症状も、ようやく消え失せてくれた。
大丈夫、ここからまだまだ取り戻せるさ_____。