冨士を見た時の田村正和さんの表情

俳優の田村正和さんの訃報を聞いて、真っ先に思い出したのはGu.冨士の顔。

というのも、henssimoを結成するもっと前、かれこれ20年以上も前になるのだけれど、ボクと冨士は田村正和さんを目の前で見ている。というか、一緒にお仕事をさせて頂いている。
といっても、ボクと冨士は顔も名前も出ないお気軽なバイト感覚で引き受けた仕事で、騒音厳禁の撮影所に、マフラーを改造したバリバリブロロン状態のアメリカンバイク2台で乗り付けるという非常識さも『バイト感覚』があってこそ出来た若気の至りというもの。

撮影カメラの前で、「適当に手を動かしてお喋りしてて」と言われるがままに、そのお気軽なバイトをこなしたり、当時人気絶頂だったお笑いコンビの人見知りではない方の方(笑)と他愛もないお喋りをしていると、スタジオの入り口から「田村正和さん!! 入りまーす!!」というスタッフの声がし、それまでスタジオ内に漂っていた和気あいあい感は何処へやら、一瞬にして張りつめた空気に一変した。
当時既に心臓を患ってだいぶ年月が経ち、仕事量を調整していたらしく、体調次第ではこの日現場には入らないという情報もあった田村正和さん。
スタジオ入り口から撮影セットのまでの通り道を開けるように両側に並んだカタチとなったスタッフたちの隙間で、『バイト感覚の』ボクと冨士だけが「生・田村正和やー♪ パパはニュースキャスターやー♪ 眠狂四郎やー♪」と高揚感を隠せずにいた。

スタジオ入り口から、テレビや映画で聞き覚えのあるあの口調をゆっくりとしたテンポで動くメトロノームに乗せたかのように「おはよう・・・」「よろしく・・・」「おはよう・・・」「よろしく・・・」と、スター独特のオーラをロングコートの上に纏いながらスーッと歩くその歩みはそのままに、両側のスタッフたちに軽く挨拶を交わしながら撮影セットまで向かう田村正和さんの、その歩みと「おはよう・・・」が止まった視線の先に、「おはよーございます♪」と嬉しさを隠しきれない笑顔を浮かべる冨士の姿が。

「おは・・・、おはよう・・・」

間もなくして順調に撮影を終え、帰り支度をしているボクたちにプロデューサーの方が掛けてくれた「キミたち面白いよ! こっちの世界でやる気ないの? それにあの田村正和さんが二度見したんだから何か持ってるよ! あんな事めったにないんだから! 」というお褒めの言葉を、「あー全然ないっす。自分らロックでやっていきたいんで。」と首を斜めに傾けながら答えた、ここでもバイト感覚の冨士と、あの時の田村さんの表情は『この世に存在しない者』『自分の脳では理解出来ない者』を見た時のもので、きっと「妖精・・・・? ??・・・あ、人か・・・」と思っただけだと、20年以上経った今でも確信しているボクの二人が経験した田村正和さんとの貴重な一場面だった。

田村正和さん。長い間、ドラマや映画でボクたちを楽しませてくれて有り難うございました&お疲れ様でした____。

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