ボートトリップはいかが?

およそ2ヶ月に及ぶパンコール島滞在も今日で最後。
いつもと同じ時刻に起き、いつもと同じ笑顔で皆と挨拶を交わし、
いつもと同じようにバカな事を言い合って皆と笑い、
いつもと同じようにボートに乗り、
いつもと同じようにイカ釣りを楽しみ、
いつもと同じように暮れてゆく空を眺め、
いつもと同じように皆で賑やかな食卓を囲み、
いつもと同じように皆で歌を唄い、
いつもと同じように自分の巣に戻る友を見送った後、
一人真夜中の砂浜に降りて、
小さく砕けた波の狭間で光る夜光虫を見ながら少しだけ歩き、
誰も居ない海岸通りへの階段を上り、
テーブルと椅子だけが残されたボート屋の
そのいつもの椅子に腰掛ける。

「ハロー! ボートトリップはいかが?シュノーケリングは?」

静まりかえった暗い通りに向かって放つボクの拙いマレー語を
夜の風だけが優しく見送ってくれるパンコール島最後の夜__。