これは旅? それとも

午前9時過ぎ。クアラ・ルンプールのプドゥラヤバスターミナルから港町ルムッに向け出発(K.L-ルムッ 高速バス 27.30RM=約900円)。
片道4時間のバスの旅も、初めてならK.L市内に点在するイスラム教国家らしいモスクを始め、この車窓から見える異国の景色に胸躍らせるのだろうけれど、もう14度目ぐらいにもなると、そのすべてに平常心で、おまけにバスの車内で聴こうとした音楽も、先ほどチェックアウトしたホテルの部屋にヘッドホンを忘れて来た事が発覚した今となっては嗚呼詮無き事かな。効かせ過ぎた冷房の通風口を塞ぎ、冷え対策のパーカーを膝にかけてからは、もはや「ただ寝る」か「飴でも舐めながらアナタへの想いにふける」ぐらいしか選択肢も無く、嗚呼愛は滅びぬと思うと同時に意識が遠のき、目が冷めた頃には港町ルムッまであと15km。


ルムッのバスターミナルに降り立ち、土産の詰まった重い重いスーツケースとバッグを引き摺り、どうせ撮りもしない一眼レフカメラを肩に掛け、フェリーターミナルまでのその少し入り組んだ通路と道を、まるで実家の近所まで戻って来たかのように、照りつける陽射しの下をその順路に迷いもせずただただガラガラと騒音を撒き散らしながら、食堂の真ん中を横切り、昼食中の現地人たちの視線を全身に受けながら船着き場まで。
チケット(10RM=約330円)購入後、近くの公衆トイレで30C(約10円)を支払い用を済ませフェリーに乗り込む。昼食どきも手伝ってか定員数70名ほどの小さなフェリーは20名ばかりの客を乗せ、無くしてルムッを出港。船内はやはりバスと同じく効き過ぎた冷房のせいで肌寒い。デッキの日除けテントの下で海の匂いを含んだ舟風を頬に受けながら、数本のタバコを燻らせている間に、フェリーはパンコール島フェリターミナルに着岸。
船内で再会した知人と二言三言会話を交わしながら浮き桟橋を歩いてターミナル出口まで。そこからはパンコール島名物とも言える鮮やかなピンク色のワゴンタクシーに揺られニッパー・ベイまで約20分。15RM=約495円。


ニッパー・ベイに着きそこからは再会ラッシュ。
ホテルのスタッフたち、ビーチボーイたち、食堂の店員たち、売り子の人々、救急車の運転手、警察官、etc…。ボクの名前を知る誰もが笑顔でボクの名前を読んでくれ、ボクの名前を知らないまでもその存在を知る誰もが笑顔で、やれ今回はいつまで居られる? だとか、すっかり肌が白くなって白人にでもなったか? だとか、そのほとんどが似たような会話なのだけれど、そのすべての人が笑顔をくれる事から鑑みるに、やっぱり里帰りだこれは____。