天然の島に育つ子供たち

宿の曾孫の一人であるその少女は、普段から言動も行動もおっとりとしている。

____その少女の傍ら。
透き通った水面にプカプカと浮かぶ袋。それは少女が魚を掴む為にうっかり手放してしまった袋である。そして少女の小さい両手の中で、海に還ろうと必死に藻掻くのは、少女が全身ずぶ濡れになりながらやっとの思いで捕まえた魚である。

その小さな両手で魚を掴んだまま、すぐ傍で浮かぶ自分の袋にゆっくりと目線を移す少女。これから後の行動は、大人の自分にはだいたいの予想はついていたのだけれど、袋に目線をやったままで掴んだ魚をドボンッと水面に落とし、傍らの袋をゆっくりと拾い上げ、再び魚を放した水面をゆっくり見返す少女。仕上がりの良いコントを見た気分だったよ、有り難う。

「惜しかったなー。今度は魚を一旦、砂浜にぶん投げればいいさ。」

「ツカサにぃにぃ、それ、反則と思う。」

『魚掴み取り大会』の帰りの車中で、宿の曾孫にゆっくりとした口調で諭されるアラフィフ___。