稲穂は実りボクは枯れる

平成最後の夏の今年は例年に比べ台風の発生個数が多く、その中でも一番強い勢力の台風が徐々に日本列島に近づいている9月初頭。

自分は未だに8月初頭に受け、初期に設定した納期をとっくに過ぎたデザイン仕事の直しを中心にパソコンの前で地蔵と化す日々が続いている。ひとつひとつの作業の山場を越えるその度に、右腕と一体化しそうになるマウスから手のひらを剥がし、火を付ける必要のなくなったつまらぬタバコを口に咥えながら、目の前のディスプレイに映る、クライアントから修正や追加の要望がある度にどんどん格好悪くなってゆくそれを眺めながらつく大きなため息が足元にゴロゴロ転がる自宅の作業場。

この仕事の影響もあり今年のお盆も帰省出来ず、父親の墓掃除も出来ていないし、先週郷里で開かれた同窓会にも出られていない。当然、友の顔にも逢えていないし、腕白盛りの甥っ子たちとも遊べていないし、年老いた母に憎まれ口もきけていない。

この歳になると、大切なモノも自ずと減り、その順番と位置づけぐらいは揺るがさない自信はあったのだけれど、仕事を真面目にすればするほど、その大切なモノとかけ離れてゆくこの感覚がどーにもこーにも嫌でならない。昨年までは、この先数ヶ月後から翌年春までマレーシア・パンコール島滞在という項目があり、それに向けて頑張りようもあったのだけれど、今年は諸事情で渾身のデザイン同様、その項目も削除されている。つまらぬ。

___あれ? こんな事をする為に郷里の高校を中退して遙々東京にまで出て来たんだっけ俺?
などと思い、今日一番の大きなため息をつく自分を、スタンドに立てられたままのギターたちがフンッと鼻で笑う9月の真夜中_________。

日記